ニトロセルロースラッカー塗装とは
ニトロセルロースラッカーは綿を濃硝酸と濃硫酸の混酸に浸し化学変化を起こして出来るニトロセルロースにシンナーなどの有機溶剤を混ぜたもので、塗布し乾燥させる事で、有機溶剤が揮発し硬く透明なセルロースの膜を作ります。
長所は、透明度が高く、硬いため、磨くことによって、美しい光沢が得られます。
短所は湿気、熱、シンナーなどに弱いことです。
どうしてニトロセルロースラッカーで塗装することになったのか
ニトロセルロースは燃えやすい事から、火薬などにも使用されていました。
火薬の需要が減ったことで、ニトロセルロースを車の塗料として改良し塗装したのです。さらに、その塗料を流用し、ギターの塗装を行いました。
このような経緯を考えるとニトロセルロースラッカー塗装はエレキギターにとって必然であるとは言えないかもしれません。
ではなぜ、ニトロセルロースラッカーに固執する「ニトロセルロースラッカー神話」が生まれたのか。
ニトロセルロースラッカーが人気な理由
ポリ塗装は木材を保護する観点からはニトロセルロースラッカー塗装よりも優れている事は明白です。
ポリウレタン樹脂でコートする事で、長い間使用しても光沢は落ちず、表面も滑らかなままです。
一方ニトロセルロースラッカー塗装は、使用するにつれて木目の痩せによる凹凸や、ひび割れ、艶が無くなったりします。木がやせる理由は木材内部の水分が蒸発する事ができる証拠に他なりません。
塗料の材質の面から考えると、ポリウレタン樹脂でコートするよりも、
ニトロセルロースラッカー塗装は木材の主要成分であるセルロースと同じセルロースでコートしている事で、木材の良さを引き出す事が出来るのかもしれません。
しかし、このようにあいまいな根拠だけでは、ますますニトロセルロースラッカー塗装でなければならない理由が神話に思えてしまいます。
最高の楽器は良い音が奏でられるだけでいい?
ここで、視点を変えてみることにしましょう。
これまでのニトロセルロースラッカー神話の論点は楽器を塗装する上で、音にどの様な影響があるかというものでした。
楽器は音を出す道具ですので、音にこだわるのは当然の事ではありますが、
例えば、家具の場合、単に収納するのに便利であれば良いだけではありません。
機能面とは別に見た目や質感なども重要です。
プラスチックの収納ケースは押し入れの中に入れる場合がほとんど。
このことは家具だけではなく、車、服、時計、などあらゆるものに共通する考えではないでしょうか。
ニトロセルロースラッカーで塗装する本当の理由
ポリ塗装の劣化はプラスチック製品の劣化に似ています。
それに対して、ニトロセルロースラッカー塗装の劣化は木製品や、革製品の劣化と似ています。
これは、ポリ塗装の材質がポリウレタン樹脂などであるのに対して、
ニトロセルロースラッカー塗装は木の主成分と同じセルロースで塗装しているためです。
ニトロセルロースラッカー塗装は木製品や革製品と同様にエイジングが進むにつれて独特の風合いが生まれます。これはポリ塗装の劣化と大きく異なります。
ポリ塗装は劣化しても風合いが感じられない原因はその素材であるポリウレタン樹脂にあったのです。
レリック加工を施す場合、ポリ塗装が適していない理由はここにあるのでしょう。
ニトロセルロースラッカー塗装とポリ塗装の関係は本革製品とフェイクレザー製品の関係に似ていると思います。
まとめ
「楽器はなによりも音が大事」で「 見た目を気にすること」はカッコ悪いという先入観が「ニトロセルロースラッカー塗装神話」の論点を音への影響のみ限定していたように思います。
靴やカバン、時計などと同様に「見た目も大事」です。カッコいいギターを持つとテンションも上がります。気分が上がればよい演奏につながるのではないでしょうか。
ニトロセルロースラッカー塗装とポリ塗装はどちらも新品の時点では見た目に大きな差はありません。長い目で見て、大切に愛用しエイジングを楽しむことも良いのではないでしょうか。
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